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出口治明という人の話をしたいと思います。テレビでライフネット生命という保険会社のコマーシャルを見たことはありませんか。漫才の博多華丸・大吉が出ているCMです。ライフネット生命は2008年にできた新しい会社で、立ち上げたのが出口治明さんなのです。出口さんは現在72歳、私とほぼ同年代です。三重県出身で京都大学法学部に学び、司法試験に挑戦していましたので、同じ時代に京都で司法試験に挑戦していたということで、勝手に親近感を抱いています。
私の場合は30歳過ぎても懲りずに司法試験にチャレンジし続けていたのですが、出口さんは在学中に一発で受かるつもりで勉強していて、一般企業への就職活動をする気はなかったそうです。しかし、人に勧められるまま、万が一のために受けていた生命保険会社に、司法試験不合格の結果、入社することになります。それから定年近くまでサラリーマン生活を送ったのち、新時代に合った生命保険会社を作ろうということで、60歳の時ライフネット生命設立に至ります。ライフネット生命はネット時代の潮流に乗り、わずか10年で急成長を遂げましたが、軌道に乗ったところで出口さんはあっさりと後進に経営を譲ってしまいます。そんな出口さんに、今度は立命館アジア太平洋大学(略称APU)が学長を公募しているから応募してみないかという話が舞い込みます。実質的な応募の条件である英語が堪能であること、博士号を持っていることなど、何一つあてはまらないだけでなく、そもそも50年近くに渡って携わってきた保険の仕事とはまったく畑違いと言っていい大学の学長職です。迷う気持ちもあったそうですが、せっかく声をかけてもらったのだからと社会勉強のつもりで受けたところ、数十人の応募者の中からなぜか学長に選ばれてしまったのだそうです。
出口さんは自分の人生について「川の流れに身を任せて流れてきただけです。」と振り返っています。若い頃から特に何になりたいとか何をやりたいという明確なものは無かった。司法試験を目指したのは一応法学部に入ったのだから挑戦してみようというのが理由。保険会社を受けたのは人に勧められたから。起業も一人でやったわけではない。学長職も声をかけてくれる人がいたから。すべていわば流されるままに来た。やりたいことが分からなくて当然、やりたいことが変わるのも当たり前。やりたいことが見つからなければ(人の助言を素直に受け入れて)流れて行けばいい。そして、流れ着いたところで頑張ればいい。せっかく流れ着いたのだからそこで一生懸命頑張る。そうやってここまで生きてきた。
私は「流れに任せてきただけ」という表現には、かなり出口さんの謙遜が入っていると思います。また、この場合の「流れ」というのは主に人との出会いや人の言葉です。出口さんがいかに出会いを大切にしてきたかが窺われます。どうすればいい出会いができますか?という若い人からの質問に対して出口さんは「そんな方法があれば私が知りたいです(笑)が、ひとつあるとすれば人から声をかけてもらったら断らずにとりあえず行ってみる、違うと思ったら途中で具合が悪くなったと言ってさっさと帰って来ればいい(笑)。」と答えています。
出口さんは旅好きで知られ読書家としても有名です。多い時はひと月に40冊、これまでに1万5000冊以上読んできたそうです。旅は、特に最初の保険会社でのヨーロッパ勤務時代を中心に、これまで世界80ヵ国にも及ぶとのこと。数多くの人や本や旅との出会いを通して身に付けた物事の見方・考え方を、出口さんは「タテ・ヨコ・算数」と表現しています。タテは時間の流れ、つまり歴史です。人類は過去1万年進化していないと言われています。現在の問題についても未来の課題についても、歴史から学ぶことがとても大事だということ。ヨコは広い視野です。日本の中だけで考えず世界に目を遣り、グローバルで広い視点を持つこと。そして算数はあいまいな感覚ではなく、具体的な数字に基づいて判断するということです。難しい課題、難問が常に私たちの前に立ちはだかります。解決に向けて考えるときに覚えておきたいアプローチ方法だと思います。
やりたいことが見つからないという人に対して出口さんはこんなことも言っています。「どんなことでも3年間とことん集中して頑張ったら、ある程度その道のプロに近いところまで行くことができます。人生80年として単純に3年で割ったら随分と色々な事を究めることができる。そんな風に考えたら人生が楽しみになりませんか?」最後に出口さんからのメッセージを載せておきます。
Go where nobody has gone.
(誰も行ったことのない場所へ行け。)
Do what nobody has done.
(誰もやったことがない事をやれ。)