阪急茨木市駅徒歩5分の高校生専門学習塾
生徒と面談指導をしていて、よく聞く声は「先生、暇です」というもの。友達とLINEでどんな話をしている?と聞いても「ヒマ~。学校、早く始まれ~」だそうです。そうですよね。予定もしていない長期休暇が続き、しかも外を出歩いてはいけない。。。暇ですよね。私は超忙しいですが、高校生は超ヒマなんです。そこで、生徒から要望の多かった「オススメの本・映画」を真面目に考えてみました。
この世にある本・映画の中からおススメのものをピックアップするのは、途方もくれること。そこで、塾・予備校らしいアプローチで作品を選びました。
ずばり「他者理解と知らない世界の発見」です。東進の林修先生が、最近の入試現代文は「他者理解」がテーマだと言っていて、「なるほど」と思ったのです。高校生には馴染みのない戦前・戦中の世界の登場人物の心情を問う小説問題が頻出なんだとか。
そもそも、「読書とは?」と考えると、自分が知らない世界、自分が経験したことないモノコトを疑似体験するのも一つの魅力です。コロナ禍で狭い部屋に閉じこもっていても、本を通して広い世界に飛び込みましょう!!
「よつば」という女の子が主人公の日常ほのぼの系マンガです。子供の豊かな感性をこんなにユーモラスに描いた作品を私は他に知りません。子供って、こんなことにハマるのか~と読んでいて多くの発見があります。「よつば」を取り囲む大人たち・お姉さんたちも個性的で、ギャグマンガではないのに、クスっと笑うことがあります。絵の描き方も印象的で、必要十分な描き方はドラゴンボールの鳥山明先生のようです。
字幕翻訳の第一人者でもあり、ハリウッドスターが来日してきた時に横にいる「おばさん(通訳)」としても有名な戸田奈津子さんの自伝です。対談形式で、彼女の人生の紆余曲折を語っていきます。プロの字幕翻訳家というのは、本当に数えるほどしかいないそうです。人の人生ってこんな風に転がっていくのか、最初は何となく始めて見ただけで第一人者になれるのか~、と等身大の自伝を読んでいくうちに、皆さんも自分の心を開いて人生を切り開いていこうと思うはず。
研究職に興味がある理系っ子におススメの本です。研究開発の中でも、新薬開発ほど「挫折(開発中止)」の多い分野はないでしょう。何千、何万もの物質を試して、マウスなど動物実験で効果が実証されても、臨床試験(ヒトでの治験)が待っていて、何千億とかけた開発費がパァなんてことも。そんな新薬開発の第一線で、開発中止のプレッシャーに打ち勝ち、世界的にも有名な薬を世に出した日本人研究者を紹介しています。
洋書が原著で、翻訳版ですね。戦前にアメリカから届いた「写真」だけを頼りに集団で渡米し花嫁になっていき、日米の戦争の開始とともに強制収容所へ次々と追い込まれ、壮絶な運命に苦しむ日本人女性たちを描いた小説です。こんな経験、皆さんはしたことないでしょう。まさに他者理解です。自分がこんな境遇になったら、どう感じるだろうか?と思いながら、読み進めてもらいたいです。
洋書(原著)で読めそうな人は是非とも原著で。英語独特の”we”と”they”という人称で日本人とアメリカ人を描き分けているあたり、英語でしかニュアンスが伝わりません。この小説に関心を持った方は、強制収容所つながりで「夜と霧」(ヴィクトール・E・フランクル)も読んでみてください。
三谷幸喜の映画・処女作です。作品が世に出た当時は日本に「裁判員制度」が成立しておらず、「もしアメリカの陪審員制度が日本にあったら?」という架空の設定での物語です。2019年のM-1で優勝して大ブレーク中のミルクボーイの「コンフレーク漫才」を映画にしたような作品です。「やっぱり、有罪やないかい」「ほな、無罪か~」という行ったり来たり審議が続き、少しずつ真実が明らかになってきます。素人の裁判官に有罪無罪を判定させ、罪の重さを判断させることの意義は・・・・と高尚な議論になりがちなトピックですが、三谷幸喜なので、そんな真面目な描き方はしません。ただただ笑わされて終わりです。
マッドデイモンとベン・アフレックが温めた脚本を映画化したもの。京都大学の数理解析研究所・望月新一教授が証明した「ABC予想」が8年間も査読(論文が正しいか他の研究者がレビューすること)されてようやく完了したというニュースも出ていますが、この映画の主人公も「数学の天才」です。そして、望月先生と同じく彼も「性格に難あり」な人物。マッドデイモンが演じるウィルが、あるカウンセラーとの出会いとやり取りの中で、過去のトラウマと向き合い、新しい世界へと羽ばたいていくストーリーです。ラストシーンの台詞はとても印象的で、私は暗唱しています。短いフレーズですけどね。
これだけ作品を紹介してきて、恋愛ものがないって、学院長って・・・・と思われそうなので、恋愛ものを紹介します。オーランド・ブルームとキルスティン・ダンストが主演のキュンキュン恋愛モノです。美人ではないですが、この作品の中のキルスティン・ダンストはとてもキュートです。仕事に大失敗し、失意の中で家族の葬式に向かうという変な設定の作品ですが、独特の世界観とストーリーが展開されて、美しいアメリカのカントリー風の情景とともにクライマックスでのメッセージを聞いてみて初めて、「なるほど、そういうことを伝えるための映画やったんか」と納得します。
Youtubeで探してみてください。トランプ大統領の登場により、アメリカではまだ人種差別が根強く残っていることが明らかになりましたが、この”A Class Divided(青い目茶色い目)”という実験が行われたのは、1970年のこと。黒人人種差別と闘ったキング牧師が暗殺された1968年の後に、差別や偏見について「実際に味わってみないと分からないよね」と言いながら、自分が担任する小学3年のクラスを「青い目の子」と「茶色い目の子」の2グループにわけたのです。「今から青い目の子はいい子で、少し長めに休憩してもいいです。茶色い目の子たちは悪い子なので、水飲み場を使うことも許されません」と身体的特徴で扱いを変えてみたのです。そうすると、子供たちの態度に変化が生まれ、差別意識が芽生えます。それだけでなく、青い目の子たちの方が茶色い目の子たちよりも良い成績を取るといった現象まで起きます。
この実験は後にたくさんの追実験がなされ、多くの議論を呼んでいます。この実験が示すことについて、的確なコメントをするのは難しいのですが、私たちが他者に抱くステレオタイプも多かれ少なかれ偏見であり、その偏見によって他者のパーソナリティが形成されてしまう怖さを感じます。教育者として心に刻んでおくべきことでもあると思います。
次回のオンライン懇談会では「暇な高校生におススメの本・映画」を紹介し合います。ブログでは学院長がひたすら作品を紹介しましたが、懇談会では高校生の皆さんのおススメする作品を聞いてみたいと思います。よろしくお願いします。