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こんにちは。Seras学院の学院長の綿引です。今回は大阪大学の総合型選抜の小論文対策について詳しく解説したいと思います。小論文で大切なことは、「私の文章は他人に採点されるものなのだ」ということを自覚することです。採点しやすい答案を作ることが大切。つまり、採点基準を意識することが大切なのです。そのあたりを詳しく解説していきましょう。
①【準備】段落番号付ける、出典チェック、設問チェック、3つある文章の関連性チェック、注釈チェック
②【パラグラフリーディング】設問の着眼点に沿って、段落ごとに要点・論理展開を把握する
③【採点基準の設定】今回の設問での採点基準を自分なりに考察する
④【論理展開の整理】問1の(二)では、「自分の経験に基づいて」とあるので、自分の意見・経験を書く方針の元で、経験を先に決めるのでなく、意見・主張を決めた後に、それに適した具体例を探す。具体例とともに、どのような順番で書き進めるか、箇条書きでストーリーを決める。
⑤【肉付け・エビデンス】自分で設定した採点基準に基づき、自分の論述の中の「論理の穴」を分析しながら、優先順位をつけて肉付けする。
・段落番号を付ける(ことで、段落ごとに分析することができる)
・出典チェック:「お喋りなことば コミュニケーションが伝えるもの」(滝浦真人)
タイトルから、筆者が伝えたい内容を想像してみる。「お喋りなことば」から想像されるのは、コミュニケーションにおける情報の受け手からみて、「ことば」には「多くの情報が盛り込まれている」ことが筆者の主張の一部になることが想像される。「雄弁な舌打ち」、「表情としてのことば」から非言語コミュニケーションも対象になることが想像される。
・設問チェック:(一)「舌打ち」と「もしもし」の共通点と相違点:これに注目して読むと決める。(二)<ことば>と<言葉>の違い:筆者独自の「ことば」の定義があることが分かる。「それがどのような意味や機能を持つか」:文章中に「ことば」の意味と機能に該当する説明や例があることを想定する。
・3つある文章の関連性チェック:出典の記載が1つしかないこと、タイトルのテイストが共通していること、「ことば」という共通の独自用語があることから、3つの文章は同一筆者の同一作品と捉える。
・注釈のチェック:ヤーコブソンさんについての説明があり、「構造主義言語学」「音韻論」「詩学」というキーワードを抜き取ることができる。3つのキーワードを知っていれば、全体的に読みやすくなる。ちなみに、構造言語学はwikipediaでは「言語学の理論と仮説」のカテゴリーの1つとなっている。
※以下では、筆者の主張に該当する所に「波線」を引く前提で解説を進めます。また、(●)ああああといった小見出しは、それぞれのパラグラフの要点です。
(1)舌打ちは(不機嫌・苛立ちという意味)の感情を情報受信者に伝える機能がある
・具体例から始まるので、何となく嫌な予感がしながら読み進める。まずは、語尾に注目して、「です」「ます」は状況描写、「~でしょう」「~かもしれません」が筆者の主張と処理する。そこで波線ポイントは、「そのとき舌打ちは~でしょう。」「そしてあなたは~かもしれません」に引く。
・設問文を思い出して、文章読解のポイントが「意味」「機能」に着目することだったので、このパラグラフの要点はその観点でまとめていく。
(2)舌打ちは、日本語の音声体系の中にも文字体系の中にも収まらない
・筆者は、全パラグラフで舌打ちの「意味」「機能」に触れたが、次は「音声学」の観点で、舌打ちへの評価を下している(主語Sが舌打ち、Cが評価)SVC型の論拠が続く。波線を引くのは「日本語の音声体系~収まる場所がありません」で、その後の文はその具体例である。
(3)日本語の体系と構造(構造主義言語学)の観点で、「舌打ちは日本語の音声ではない」という見方
・「つまるところ」「ですから」「少なくとも」「しかない」と強調する論理マーカーが多いので、筆者にとって大切な主張が含まれているように思うが、どれも大切そうに見えて、要点をまとめることが難しい。そのため、次のパラグラフを参照して、「言語というものを~立場からすれば、こうした見方は~」に着目し、(3)パラグラフの要点をまとめる切り口を決める。
(4)構造主義言語学を拡大解釈し、舌打ちをコミュニケーション上の価値がないとする考えに筆者は反対
・論理マーカー「けれども」「~でしょう」「実際」を頼りに、「けれども、~~でしょう。」の文に波線を引く。「それを拡大解釈」のそれを「前パラグラフの内容」とし、注釈の内容から「構造主義言語学」として括る。「実際」以降は筆者の論拠(主張をサポートする理由になるもの)であり、それが第1パラグラフの具体例に戻っていることに気づく。ここで、筆者のAREAが完成しそうな予感がするので、まとめておく。
A:構造主義言語学を拡大解釈して、舌打ちをコミュニケーション上で価値がないとする考えに反対
R:「舌打ち=意味なし(機能なし)」ならば「情報受信者は舌打ちの感情を説明できない」
E:第1パラグラフ:「舌打ちは(不機嫌・苛立ちという意味)の感情を情報受信者に伝える機能がある」
A:第4パラグラフ以降に書かれる内容で、筆者の主張がまとめられる想定で読み進める
今回は、あまり論理展開の明確な文章ではなかったのですが、英語を中心に評論文では「AREA」という構造に沿って論理が展開されることが多いです。A:Argument(主張:英語や論理的文章では言いたいコトをまず言います)、R:Reason(論拠・理由:理由は主張の中のキーワードの分析であったり、三段論法の一つが使われたり、色々です。主張に対して理由は?と尋ねられると困るなと思うはずですが、それは筆者も同じことで、文章中に論拠が抜けていることが多いです。言い換えも論拠のうちの一つとして扱いましょう。)E:Example(具体例・根拠:実際はEllustrationが正しい用語ですが、分かりにくいので、私はExample(具体例)としています。具体例や根拠は、論理マーカーが明確に書かれることが多いので、すぐに判別できます。ちなみに、主張部分を見分ける論理マーカーも「~でしょう」「~べき」「が大切」「が鍵」など、注意すれば見つかるものもあります。
一つの主張に対してRもEも両方丁寧に記述すると無駄に長くなることから、RかEかどちらかに触れることもあります。そこのRとEの欠けは、その文章のウィークポイントの一つになります。また、AREAを書き出す中で、「~~とは限らない」系の反論が浮かぶことがあり、それが筆者のロジックの穴です。読解型小論文では、筆者の論理の穴に気づいた場合、その穴が「自分の意見として書く主張」のヒントになります。
(5)日本語の文字体系・音声体系外の舌打ちにも、意味が相手に伝わるはずだ
・「でしょうか。」「事実」「まさしく」「でしょう」といった論理マーカーから筆者の主張を汲み取っていく。
・<言葉>と強調した表現があるので、「ことば」と対比した意味が込められていると理解する。
<言葉>:日本語の文字体系・音声体系の範囲内のテキスト
<ことば>:日本語の文字体系・音声体系の範囲内にあるかという構造主義言語学の認識に捉われずに、声のトーンや表情といった情報を通して感情を相手に伝えるもの
(6)私たち人間は、言語体系外のコミュニケーション(ことば)から多くの感情を受け取っている
・第6パラグラフの前半は、これまでの主張と論拠の言い換え、言い直しである。最後に筆者が言いたいことは、最後の文に集約される。そして、その内容を理解すれば、小見出し「雄弁な舌打ち」の意味が理解できるようになる。
・ここで筆者のAREAが完成したので、まとめておく。
<舌打ち>のAREA
A:構造主義言語学を拡大解釈して、舌打ちをコミュニケーション上で価値がないとする考えに反対
R:「舌打ち=意味なし(機能なし)」ならば「情報受信者は舌打ちの感情を説明できない」
E:第1パラグラフ:「舌打ちは(不機嫌・苛立ちという意味)の感情を情報受信者に伝える機能がある」
A: 私たち人間は、言語体系外のコミュニケーション(ことば)から多くの感情を受け取っている
ここから<表情としてのことば>
(7)舌打ち=表情
(8)表情=情報発信者の感情が不意に吐露されたもの
・ここで、次の<表情としてのことば>のテーマは、<雄弁な舌打ち>編が「情報受信者の目線」であることに対比して、「情報発信者」にフォーカスしていることが分かります。
(9)舌打ち=不意に吐露された<表情>の1形態(ヤーコブソンの引用)
(10)表情=非意図的=「表情は嘘をつかない」と捉えられることが多い
(11)表情は<言葉>よりも多くを語る
(12)情報伝達者が意図しない表情が、言葉よりも、情報受信者に強い印象を与える
(13)情報伝達者の表情は多くの意味を持ち、情報受信者は<言葉>の真偽を測ることがある
ここで、筆者のAREAを整理しておく。
<表情としてのことば>のAREA
A:表情=情報発信者の感情が不意に吐露されたもの
R:表情=非意図的=「表情は嘘をつかない」と捉えられることが多い
E:<言葉>は面白い先生の<深いため息>
A:情報伝達者の表情は多くの意味を持ち、情報受信者は<言葉>の真偽を測ることがある
ここから<「もしもし」の意味?>
(14)命題A「言葉でなければ、意味がない」⇒逆の命題B「言葉であれば、意味がある」
(15)「もしもし」は言葉であるが、<意味>が空虚で余剰な語である
・具体例のパラグラフで分かりにくいが、論理マーカー「ありますが」「事実」「実際」に注目すれば筆者の主張の箇所はすぐに分かる。
(16)もしもしは、辞書的にも、「申す申す」という語源の名残りを感じられない<意味>のない言葉である
(17)不明
・第17パラグラフの要点が分かりずらい。第18パラグラフに「むしろ」とあることから、「A~むしろ~B」の論理展開だと気づき、第17パラグラフの内容は丁寧に読めば分かるが、そもそも理解する価値のパラグラフとして処理する
(18)もしもしには「儀式的な」機能だけがあり、「つながっている」ことを確認する機能である
・論理マーカー「ではなくて」から、その下に波線を引く。並列の「そして」があるので、その下も波線を引く。
(19)「もしもし」の機能は、電話にてコミュニケーションの回路を確保する機能がある
ここで、筆者の主張のAREAを整理したい。
<もしもし>のAREA:テーマは「言葉であれば、意味がある」⇒その答えが主張になるはず。
A:「もしもし」は<意味>がない
R: 儀礼的なものだから
E:辞書的にそう書いてある
A:もしもしは、コミュニケーションの「回路」を確保する<機能>がある
つまり、「もしもし」には<意味>がなく<機能>がある
ここで、3つの文章の論旨を再びリストアップする。
<舌打ち>のAREA
A:構造主義言語学を拡大解釈して、舌打ちをコミュニケーション上で価値がないとする考えに反対
R:「舌打ち=意味なし(機能なし)」ならば「情報受信者は舌打ちの感情を説明できない」
E:第1パラグラフ:「舌打ちは(不機嫌・苛立ちという意味)の感情を情報受信者に伝える機能がある」
A: 私たち人間は、言語体系外のコミュニケーション(ことば)から多くの感情を受け取っている
<表情としてのことば>のAREA
A:表情=情報発信者の感情が不意に吐露されたもの
R:表情=非意図的=「表情は嘘をつかない」と捉えられることが多い
E:<言葉>は面白い先生の<深いため息>
A:情報伝達者の表情は多くの意味を持ち、情報受信者は<言葉>の真偽を測ることがある
<もしもし>のAREA
A:「もしもし」は<意味>がない
R: 儀礼的なものだから
E:辞書的にそう書いてある
A:もしもしは、コミュニケーションの「回路」を確保する<機能>がある
つまり、「もしもし」には<意味>がなく<機能>がある
③【採点基準の設定】
(一)「舌打ち」と「もしもし」の共通点と相違点を述べなさい。
・どういった切り口が文章中に出てきたかを整理していき、共通しているか異なっているかチェックする
※以下の表を埋めて、解答の方針を立ててください。
切り口 | 舌打ち | もしもし |
(例)言語体系 | 言語体系の中にない | 言語体系の中にある |
(二)この文章で述べられる<ことば>と<言葉>の違いを明らかにした上で、<ことば>の例を取り上げ、それがどのような意味や機能を持つか、自分の経験に基づいて、述べなさい。
・採点基準は、とても明確に設問文に指定されているので、列挙していきたい。
①<ことば>と<言葉>の違いに触れていること
②提案した具体例が<ことば>の条件に合致していること
③具体例には、自分の経験が盛り込まれていること
④具体例において、<意味>と<機能>が明確に書かれていること
問1の(二)では、「自分の経験に基づいて」とあるので、自分の意見・経験を書く方針の元で、経験を先に決めるのでなく、意見・主張を決めた後に、それに適した具体例を探す。具体例とともに、どのような順番で書き進めるか、箇条書きでストーリーを決める。
・具体例を考える上で、<ことば>への適合条件を整理する
===参考=========================================
<言葉>:日本語の文字体系・音声体系の範囲内のテキスト
<ことば>:日本語の文字体系・音声体系の範囲内にあるかという構造主義言語学の認識に捉われずに、声のトーンや表情といった情報を通して感情を相手に伝えるもの
==============================================
<条件>
・文字体系・音声体系の範囲外にあること
・感情を相手に伝える機能がある
・情報発信者が意図せずに発信する表情のようなものも良さそう
・情報受信者が、<ことば>を受け取ることで<言葉>の真偽を測るようなストーリーが良い
・辞書にはない<ことば>であることが明記されると良い
自分で設定した採点基準に基づき、自分の論述の中の「論理の穴」を分析しながら、優先順位をつけて肉付けする。
テーマ(お題):子供にスマホを持たせるべきか?
今回のテクニック:①カテゴリー分け ②キーワード分析 ③反論の列挙による論拠の選定
①カテゴリー分け
子供を(0)幼児(1)小学生(2)中学生(3)高校生(4)大学生に分類する。
理想的なカテゴリー分けは、MECE「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」で、つまり、「互いに重複せず、全体として漏れがない」ことが良いとされています。ここで、「子供」を定義することで、自分の主張を明確にすることができます。与えられたお題に対する、あなたの主張を具体的に定義してみましょう。
主張:幼児・小学生はスマホを持たない方が良く、中高生・大学生はスマホを持つべきだ
②キーワード分析(論拠の出し方)
AREAで自分の論理展開をまとめようとする時に、準備する要素で苦戦するのはR(論拠・理由)です。基本的に、主張をした後に「理由は?」と聞かれることに苛立ちを感じるものです。ディベートの世界では、三段論法だとか弁証法だとか難しい理屈もありますが、分かりにくいので割愛します。論拠の最も簡単な探し方は、自分の主張の中にあるキーワードについて特徴を列挙することです。そうすることで、論拠のヒントが出てきます。
R①(論拠):小学生は善悪の判断能力がなく、金銭的にも時間的にも自己管理もできない
R②(論拠):スマホは、勉強時間を奪う
R③(論拠):中高生・大学生になると電車での移動や待合せが増えるので連絡手段が必要
R④(論拠):学校の授業のオンライン受講や提出物の管理にスマホが必要
③反論の列挙による論拠の選定
色々と論拠の候補は出てきましたので、自分はどの論拠で小論文の作文を進めるのかを考えたくなりますよね。その際は、「反論されにくい論拠」「反論されても、理屈が生き残る論拠」を選びましょう。
Re’①(反論):高校生でも自己管理できない子はいるし、ちゃんと躾ができていれば小学生だって大丈夫。
Re’②(反論):特定のアプリの使用時間を制限すればよい。スマホがなかったとしても遊ぶ子は遊ぶ。
Re’③(反論):スマホにする必要がない。ガラケーで問題ない。
Re’④(反論):小学生だって、タブレット学習やスマホでの学習ができたら便利だ
これらの反論をしてみた結果、R④(論拠)「学校の授業のオンライン受講や提出物の管理」が最適な論拠のように思えてきます。